採用難を諦めないための 「採用・定着」戦略の本質

面接

先日、商工会議所にて「採用難をあきらめない―知っておきたい『採用・定着』戦略」をテーマに講座を担当いたしました。多くの経営者の皆様が参加され、地域企業が直面している採用環境の厳しさを改めて実感する機会となりました。

求人を出しても応募が来ない、ようやく採用できても定着しない、その繰り返しの中で疲弊しているという声は決して少なくありません。

本講座では、求人媒体の選び方や面接テクニックといった表面的な対策ではなく、採用を「経営の設計」という観点から捉え直すことの重要性をお伝えしました。

採用がうまくいかない背景には、景気や人口動態といった外部環境だけでなく、企業側の構造的な課題が潜んでいることが多いからです。

求職者視点を理解しているかという問い

講座の冒頭では、まず「自社は求職者の視点をどこまで理解しているか」という問いを投げかけました。多くの企業では、募集条件や待遇面を中心に求人票を作成しています。

しかし求職者が本当に知りたいのは、その会社で働くことによって自分の時間や人生がどのように変わるのかという点です。

仕事内容の詳細よりも、どのような価値観を持った組織なのか、どのような意思決定がなされるのか、自分はどの位置で役割を担うのかといった情報が重要になります。

求人票を条件の羅列で終わらせてしまうと、企業の意図は伝わりません。

講座では「求人票はラブレターである」という表現を用いました。相手の立場を想像し、伝えるべき想いを構造化しなければ、心は動きません。

採用の第一歩は、広告ではなく対話の設計にあるという点を強調しました。

一次面接の目的を再定義する

続いて取り上げたのが、一次面接の役割です。

面接を「選抜の場」としてのみ捉えてしまうと、評価基準の曖昧さが露呈します。

本来の目的は、企業と応募者双方が相互理解を深めることにあります。自社が求める人物像を言語化できていない場合、面接官の感覚に判断が委ねられ、結果として入社後のミスマッチが生じます。

講座では、求人票に何を書くべきかという議題と連動させながら、評価軸の明確化について解説しました。企業がどのような方向へ進もうとしているのか、その過程でどのような役割が必要なのかが整理されていれば、面接は単なる審査ではなく将来像の共有の場になります。

採用の失敗は人物の問題ではなく、設計不足に起因することが多いという視点を提示しました。

内定から入社後までを含めた定着設計

採用活動は内定を出した時点で終わるものではありません。むしろ、そこからが本当のスタートです。

講座では、内定後にどのようなコミュニケーションを取るべきか、入社後に何を最初に行うべきかについても触れました。入社初期の体験が組織への帰属意識を大きく左右します。

役割が曖昧なまま業務に入れば、不安が増幅し、早期離職につながります。一方で、期待されている成果や支援体制が明確であれば、安心感が生まれます。

採用と定着を切り分けるのではなく、一連の流れとして設計することが重要です。競合他社との差が生まれるのは、給与水準よりもこの構造部分であるという点を強調しました。

制度を整える前に、経営者自身の構想を言語化することが不可欠です。

採用は経営戦略の一部である

講座の最後にお伝えしたのは、採用を人事部門の業務として完結させてはならないということです。

採用は経営戦略の一部であり、企業の未来像と直結しています。どのような組織をつくりたいのか、どのような価値を社会に提供したいのかが明確であれば、その実現に必要な人材像も自ずと見えてきます。

逆に、方向性が曖昧なままでは、どれだけ採用活動を強化しても根本的な改善には至りません。今回の講座でも、参加者の皆様から「まずは自社のビジョンを整理する必要があると感じた」という声をいただきました。

採用難を外部環境の問題として片付けるのではなく、自社の設計を見直す契機にしていただければと考えています。BeyondAxis Partnersでは、こうした構造整理を通じて、経営者の想いを仕組みに落とし込む支援を行っています。

採用は単なる人員補充ではなく、組織の未来を形づくる設計行為であるという視点が、今後ますます重要になると感じています。

この記事を書いた人

長濱 かおり
長濱 かおり社会保険労務士・行政書士
人事・組織設計および業務提携・契約支援を専門とし、経営者の想いを実際に機能する仕組みへと落とし込む支援を行っています。

制度や契約の作成にとどまらず、企業の実態に即して継続的に運用できる形で整えることを重視しています。

長崎県佐世保市を拠点に、オンラインで全国対応。